家事調停の利用法

先日の相談であらためて感じたことですが、裁判所に持ち込めば問題はすっきり解決するというものではありません。

相談者の方いわく、現居所では兄夫婦および兄の子供の家族と同居している。3階建ての自宅は兄と兄の子供、配偶者が建築資金を負担している。

これまで父親の在宅介護・日常の世話に自分が携わってきたが、父の死後、兄からいずれ家賃を払ってほしいと言われた。

父の年金・預金から月にいくらか自分の生活費を支出してもらっていた。父の預金の管理は相談者が行っていたので、預金を引き出し様々な支払いに充てていた。

建物敷地は父の単独所有または父の権利が存在している。兄は全てを自分で取得したいようである。

この状況で、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てても、裁判所で扱うのは、敷地の権利をどのように分割するかという点のみです。父の年金・預金から生活費を得ていたという話題は、遺産分割調停では「扱わない」となります。ましてや、兄にどれくらいの家賃を払うか、退去するなら立ち退き料を取れるかという点は、家庭裁判所では一切扱いません。

紛争(もめごと)はトータルで解決してこそ意味があり、トータルで捉えることにより、交渉材料が増え、解決の糸口が見えることもあります。この点、裁判所は原則的には遺産すなわち死者が遺した財産をどう分けるか(しかも預金は扱わないことが原則)のみを話し合う場であって、その他の争点は「当事者で話し合って下さい」というスタンスです。

ただし、調停が無意味というわけではありません。私の経験では調停委員はじめ裁判所はきちんと説明すれば、紛争の全体像についても聞き取りをし、理解も示してくれます。あくまで強制力を働かせるのは遺産分割のみというだけで、間に立って遺産分割の周辺事情、周辺の要望、トータルの解決案を相手に伝えることもやってくれます。

しかし、そのためには紛争の全体像をうまく説明すること、家裁が遺産分割の問題として扱える争点、本来は遺産分割調停の対象外だが交渉材料となりうる事情、こちらが譲歩できる事情、譲歩が難しい事情を切り分けて説明することが最低限必要であると思います。

「素人ではそんなこと難しい」、それはもっともであり、勢いよく声をあげる当事者(というより関係者)の対応に裁判所が時間を忙殺されているのでは、という光景も良く見ます。

声の大きいものが勝つということの無いよう、弁護士への依頼がスムーズにできること、そして弁護士の解決策構築力と説明力が求められると思います。

 

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